2.たったひとつの記憶

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「キキの言ったとおりだったな。」 「…キキ?」 一紗が買っていた猫の名だ。 「そ。ちょっと前にキキに会ったの。そしたら、この辺にあたしの事を知ってる人がいるって教えてくれて。」 「…へぇ。」 キキという名の真っ白な猫には、いつもも引っかかれたり威嚇されたりしていたからいい思い出はないけれど、今更ながら、少し好きになった。 「キキの事は覚えてたんだ?」 「うん。そうよ。」 …他は何も覚えていないのに? 「ふぅん。」 頭に浮かぶ図式。 圭介>>キキ。 「ブハクション!!」 圭介が豪快に、本日二度目のクシャミをする。 「ごめ…、中入ってていい?」 「うん。あ、寒かった?ごめんね、気づかなくて。」 こんな所も、ちっとも変わっていない。
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