2.たったひとつの記憶

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鼻歌を歌いながらガラス戸を開けるケイスケ。 その歌は、冬の歌。 切ない恋の歌。 ふと、脳裏をよぎる。 人が歩いている。 3人。 ケイスケが歌っていた。 「やだそれ、冬の歌じゃない。」 一紗の声がした。 「いーじゃん、いい歌なんだから。」 ケイスケが答える。 「もう桜咲いてるのに?」 また、一紗。 「ぶち壊し。」 別の声がした。 男性の声だ。 「ひでぇやシゲ!」 「ひどいよシゲちゃん。」 「うわ、一紗寝返った!!」 明るい笑い声が3分咲きの桜の並木道に響く。 .
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