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あの時も桜の花びらで薄ピンク色で一帯が染め上げられていた。
「──私ね。ちょっと遠くに行かなくちゃならなくなったんだ…」
突然の事に俺は目を丸くした。
「え!?やだ!」
そんな言葉に“あの人”は困った顔を浮かべながら微笑んだ。
「ん…やっぱり言ったわね…。そんな我が儘な君に宿題♪」
それに俺はキョトンとしてオウムのように言葉を口にした。
「しゅく…だい…?」
「そう。それが出来たら、直ぐに君の所に戻って来てあげるって言うのはどう?」
小首を傾げる“あの人”に、俺は──
「やる!すぐ終わらせちゃんだから!」
今思うと恥ずかしいくらいに必死に叫んでいたが、“あの人”は優しい笑顔に困った色を混ぜて
「ふっふっふっ♪すぐに見つけられちゃうと困るなぁ…。お姉さんの用事が終わんないから…」
と呟いていたのを覚えてる。
そして、ある一言を残して“あの人”は消えてしまった。
『ここが始まり』
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