第一章 覚と薬師

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 ――ぐぅ。  腹が鳴った。そういえばこの前の村を出て以降、ろくなものを食べていない。    ガサガサ。  背負っているリュックサックを探る。煎餅を一枚発見。三口で食べきる。 「た……足りん……」  しかしもう食料はない。米一粒すらない。はやく民家を探さなければ。飢え死んでしまうかもしれない。  飢え死に。……何と素敵な響きだろうか。  隼人はぼんやりと空を眺め、思った。  あぁ、いい天気だなぁ。  こんな晴天の下で俺は死ぬのか。  たった一人。こんな道端で。  しかも空腹で。  隼人、晴天の下にて散る。冗談じゃない。  どうせなら怪物に立ち向かいながら『俺にかまわず先に行け!』とか、かっこいい台詞を吐きながら最期を迎えたかった。男の夢である。    ……まぁ、こんな下らないことを考えられる余裕があるってことは、まだまだ大丈夫ってことなんだろう。 「まぁ、何とかなるさ。あっはっは」  とりあえず一人で笑っておく。淋しい。  空腹と戦いながらも歩く。民家はどこにも見当たらない。もう、どれくらい歩いただろうか。
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