【5】同窓会

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『え~と。本日は、お忙しい中なのに、この同窓会にご出席どうもです。』 無理に丁寧に喋ろうとして、おかしな日本語の挨拶が始まった。 武志は、隅に座って微笑んでいるガイドの中山を見ていた。 ほんの2分程のスピーチで、秀樹の額は汗だらけであった。 『秀樹、ガイドの挨拶はないのか?』 『そんなもんねぇよ。』 普通は、「本日は我が社を・・・」とかするものでは?とも思ったが、恐らくはバスの中で済ませたのであろう。 少し残念であった。 こうして、同窓会の第一部が開宴したのである。 みんなはそれぞれにあの頃の思い出話に盛り上がっている。 『武、お前は何で結婚してないんだ?』 余計なお世話だ! その質問を、そっくりそのまま返してやろうかとも思ったが、ここには見当たらない坂本楓のことを思い出していた武志は、思わず口にした。 『実はオレ、中学の時に好きなコがいてな。未だに忘れられないんだ。ハハ。』 『へ~。お前らしいな。副会長の神崎ご令嬢か?お前たちは噂あったからなぁ。残念だが、彼女は今アメリカだ。』 『いやいや、そうじゃない。あれは、ただの噂だ。そうだ!そもそも噂の根源はお前じゃないか!全く。』 『まあまあ、過ぎてしまったことだ。ハハ。じゃあ誰だ?まさか・・・あの「バケモノ」じゃあなえよな?』 その瞬間、武志は秀樹を突き飛ばしていた。 彼女への想いが、そう反応してしまったのである。 『彼女は、そんなんじゃない!謝れ!』 予想もしていなかった反応に、秀樹は反抗する気も起こらなかった。 声を荒げた彼を、親友は初めて見たのである。 全員が、何事だ?と注目した。
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