【9】再会、そして…

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【9】再会、そして…

見つめ合う二人の周りで、満開の桜が散り始めていた。 『楓さん。手術したんだね。綺麗だよ、とても。本物のガイドかと思って、全然分からなかったよ。どうして黙っていたの?』 実のところ、ずっとガイドの声や笑顔に、妙な感覚を感じてはいた。 しかし、まさか彼女とは思いもしなかった。 『私・・・こんな、作り物の顔だし・・・。今更言い出せなくて。ごめんなさい。』 『そんな、謝らなくていいよ。』 彼女の気持ちも分かる気がした。 『でも、また会えて本当に良かった。僕はこれでも探したんだよ。・・・君のことが忘れられなくて。』 今頃になって、素直に言える自分が不思議であった。 武志は少しの間、考えた。 『そうだ!楓さん。もう一度、あの木のところへ行ってみようよ。』 二人の想いを確かめたかったのかも知れない。 楓は何もきかずに従った。 途中、武志は車からバッグを取り、二人で校門へ向かう。 門には鍵がかかっている。 バッグを肩にかけ、武志は先に門を乗り越えた。 彼女を、と思って振り向くと、もう彼女は入っていた。 そうして二人は、一番奥の「恋人の木」へと歩いて行った。 (・・・!!) 『か、楓さん!!』 『武志さん。』 二人が驚く目の前で、一度も咲くことがなかった桜の木に、花が咲いていた。 小さな木ではあったが、他の木に勝るとも劣らない、見事な花が咲き乱れていた。 『楓さん。咲いたよ!先生の言っていた話は、本当だったんだ。こんなに綺麗に!!』 武志は、彼女に会えた喜びと、花が咲いたことに感極まり、暫く桜を見つめていた。 そして・・・彼女の方を向いた武志の笑顔が固まった。 じっと花を見つめる彼女には、悲しみと切なさが漂っていた。 それは、あの日、教室からこの木を見つめていたものと、同じであった。
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