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『・・・如何にも、我は裏切り者だ。』
「人に手を貸したか・・・赦さぬぞ!」
『赦されずともよい・・・我は耐えかねただけなのだ。
人類があまりにも愛おしく、我らを崇拝しておらぬ者でも殺す事が・・・できなかった。』
「それが裏切りだというのだ。
この世には、我ら旧支配者とその崇拝者が居ればよい!
他の者などいらぬ!」
築き上げるは、我らだけの理想郷――――
「・・・貴方方、足元を見ていないでしょう。」
「何だと?」
「足元を見ていないでしょう、と申したのです。
そんな状態で、理想郷がつくれるものですか。」
「貴、様・・っ・・・言いたいだけ言いおって!!」
『貴殿らが足元を見ていない・・・それは正しい。』
「貴様まで言うか、アグダ!!」
『では問うが、貴殿らは崇拝者に何か恵みを与えたか?
ただ自らへの供物にするべく、選んだだけではなかったか?』
アグダがそう言うと、「子供」が黙った。
『・・・我はそれを見て耐えかね、旧神に味方した。
足元をよく見る者こそ、人の上に立つに相応しい。
そして足元をよく見る者には、自然と人が集まるものだ。
集まった人々は、皆主人たる我らに従ってくれる。此方が強要せずともな。』
「・・・・」
二人は黙り込んでいたが、口を開いて・・・
「・・・アグダの言う通り、だな・・・」
「・・・流石、『星渡りの龍』だ・・・」
二人の姿が、消えていく。
そして―――
「・・・我は一度、頭を冷やしてこよう・・・」
「我は今一度、封印に従い眠るとしよう。
・・・目覚めた時は、人の下にでもつこうか・・・」
そう言って、消えた。
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