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「出来ました」
パイの香ばしい匂い。匂いや見た目は(それほど)おかしくはない。
ぐう~…。
硬直。匂いに騙され(?)、ボクのお腹が限界を訴えてしまった。
「あら、ルークも食べる?」
「いえ、ボクは…」
そのとき、先生のつぶらな瞳がきらっと輝いた、気がした。
「遠慮しなくてもいいんだよ、ルーク」
先 生 …!!
あなた何をおっしゃるのですか…!?
ボクの目は潤みそうでした。でも英国少年たるもの、女性を傷付けるわけにはいきません。
「そうよ。今食器を運ぶわね」
ぐっとこらえて、先生の道連れになる決意をしました。
観念し席に着いたボクに、先生は申し訳なさそうな顔をしています。魔が差した、と。
いいんです、先生。とことん付き合います。だってボクは先生の助手ですから。
「さあ、召し上がれ」
素敵な笑顔です。
「いただきます」
先生とボクは声を揃え、パイを口に含みました。
衝撃的でした。
まるで電気が走ったような感覚を覚え、ボクはフォークをくわえながらぶるぶる震えだしてしまいました。
「どうですか?」
答えられないボクに代わり、若干震えながら先生は答えます。
「その…とても、そう、個性的な味だね」
嗚呼、先生、先生は英国紳士の鑑です…。
「よかった、こちらもどうぞ」
何がよかったんだろう。
先生はアロマさんのすすめに従い、ジャムを塗ったパンをかじり…固まりました。
「アロマ…このジャムは…?」
「わかりますか?」
「まさか…」
満面の笑みだ。
「私が作りました!」
ぱたり。
「…あら?」
一般的な材料を使い、一般的な料理を作ったのに、なぜしびれてしまうのだろうか。
いつかこのナゾも解けるんでしょうか、先生…。
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