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店員「にしても、ボサボサの頭ですね。」
雪蛍「…山にとじ込もっていたからなぁ。」
髪をいじりながら見ていた。
店員「…あなた、えた…?」
雪蛍はピクッと表情を変えた。
店員「わ~。怖い顔しないで。
私、差別したくないから。」
雪蛍「…?」
店員「なんか面倒だし、皆仲良く平和でいたいじゃない?」
最もな意見だ。
店員「ちょっと来て。頭、洗ってあげますから。」
そう優しく微笑んだ。
雪蛍は思った。
……もし僕が仏ならば、彼女の幸せを願いたい……。
店員「…聞きづらいですが、左手どうなされたのですか…?」
随分前に自分で作った左手を、悲しい目でみた。
雪蛍「……僧侶に切られたのです。」
店員「…そうですか…。それはさぞかし辛かったでしょう。」
洗い終わり、タオルで拭いていた。
雪蛍「…ありがとう。」
店員「いえいえ。
心配なさらないで。
私も一介の着物屋ですから。お客様には変わりはありません。」
そう言いきってくれたことに、すごく嬉しかった。
…――優しい人も、この世にいるのだな…。
店員「…美しい黒髪ですね。」
雪蛍「ありがとう。」
後ろで一つに結った。
店員「さぁ、次に着付けです。」
店員は、似合いそうな色を時間をかけて決めた。
雪蛍「…やっぱり動きにくいな…。」
店員「いえ、綺麗ですよ。」
その頃月夜は待ちきれなくて寝ていた。
雪蛍は、雪のように白く、そして美しい姿だ。
これで男だと間違われない。
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