生きる

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雪蛍「…月夜…。」 揺すっても起きない…。 雪蛍「…ふぅ。」 店員「そういえば、山から来たと言われましたよね?」 雪蛍「…はい。」 店員「山には、仏と話した女がいると聞きました。」 雪蛍「…ふうん。」 店員「…私、その人から、仏様に頼んでもらいたいけれど…。どこに、どういう人か…全然わからないの。」 雪蛍「…へぇ…。」 月夜がようやく起きた。 月夜「……綺麗…。」 雪蛍「ありがとう。じゃぁ、ご親切にありがとうございました。」 店員「いえ。 私の名は、春美。またいらして。」 雪蛍「…それと…。 好きな人がえたなだけで差別してくる奴は気にしないで。 春美さん。お主は綺麗な心を持っている…。 綺麗な心の持ち主が、汚れてはいけない。だから…。そう仏に頼んでおくよ。」 後ろを見ずに話した雪蛍は、最後に振り向き様に笑っていた。 春美「…あの方が…。仏様と話された方…。」 呆然と歩いて行った方向を涙目で見つめていた。 …―――あの方は…。 仏様と話された方で…。 仏様なのかも知れない…。 そう思ったという…。 今まで… ただ生きていただけだった…。 だけど今から変わる感じがした。 なぜかは知らないけど…。 それでも…。 差別されている好きな人を思う気持ちは、強く根太く…。 誰にも壊せない気持ちとなった。 「生きる」ことは… 辛いと感じていた… でも…何か目標ができて、差別されている好きな人の、ずっとそばにいたいと感じた。 雪蛍様か…。 美しい名の人が、いきなり来てたった少しの言葉で、私の生活をこんなにも変えてくれた…。 ………生きていて… 良かった……―――
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