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「千春……学校抜け出すのやめてくださいよ……授業サボって闘技なんかし……てっ!?」
少女は、少年の目の前の金網に強く蹴るように足を掛けて上に跳んだ。
そのまま空中で一回転すると、少年の隣に着地する。
「別に良いだろ? 私は闘技が大好きなんだ! それに闘技は……」
「観衆、闘技者さえ集まればどこでも開催しても良い、ですよね? いったい何回このやり取りしたと思ってるんですか? 今更こんな闘技の基本事項は小学生だって知ってますよ……」
「まったく……夏樹は理屈が多いんだよ! さすが学園きっての秀才だな!」
少女――『佐倉千春(さくらちはる)』は上腕につけた腕時計のようなもののボタンを押した。
すると、千春がつけていた手甲が光に包まれていき消えていった。
「秀才はこの際関係ないですよね? まったく……そんなに闘技が好きなら魔法の授業にも出てくださいよ。僕は授業に出たいのに、千春がいないと僕が探しに出てこなくちゃならなくなるんですよ?」
少年――『神流夏樹(かんななつき)』は消えていく手甲を見ながら、ため息をついた。
「私は魔法は苦手なの! いいのよ私は体術があるからね!」
千春は右手で作った拳を、左手に叩きつけながら微笑んだ。
「それは……千春は剣戟にしか出ないからですよ! 武闘とかチーム戦はどうする気ですか?」
夏樹は右手で頭を掻く。
「私出ないもん!」
「よく平気でそんなことが言えますね……」
夏樹はもう一度ため息をついた。
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