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「ほら、帰りますよ」
夏樹は自分が来た道を指しながら言う。
千春は大げさに肩を落とした。
「分かったよ~……」
「待て! このクソガキ!」
千春が渋々と夏樹の後ろについていこうとしたとき、太い怒号が響いた。
二人が驚いてふりかえると、千春の裏拳でノビていたスキンヘッドの大男が顔を真っ赤にし、肩を怒らせ立っている。
「どうしたのオッサン? 勝負はついたでしょ? いったい何よ? ……あ、分かった! 私に弟子入りしたいんでしょ? でもごめんね~私は弟子を取らない主義な……」
「誰がお前の弟子なんかになるか!」
勝手にどんどん話を進める千春に、大男がさらに顔を紅潮させ突っ込んだ。
「冗談に決まってるじゃん。ってかそんなに顔を真っ赤にすると……オッサンたこみたい」
無礼千万なことを言い出した千春は、カラカラと笑う。
大男はさらに赤くなり、千春を指差しながら荒々しく叫んだ。
「ふざけるなっ! 次は魔較(まかく)で勝負だ!」
大男が叫ぶと、千春の顔色が変わった。
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