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片親で狭い思いや負い目を感じさせたくなかったのか、父は頑張っていた。
授業参観や運動会には仕事を早退、ときには休んでまで来てくれた。それは中学に上がって体育祭、文化祭と名前が変わってからも続いた。
だけどあたしはそんな父に対して、決していいとは言えない態度で接していた。
愛されていないことは解っていたから、『いい父親』の姿は仮初めを通り越し、滑稽にさえ見えた。
家にいるときは部屋に閉じ篭もり、会話どころか顔すら合わせようとしないあたしに、父はご飯時必死に喋りかけては、夜中、一人で酒を飲みながら溜息を吐いていた。
反応など全くと言っていいほどしないのに、めげずに父は話しかけてくる。しかし、親の愛に冷めたあたしにとってそれは鬱陶しいだけだった。
寂しい、など思うわけがない。かつては愛したであろう人を、愛したことさえ捨て、忘れ、出て行った母。母がいなくなった瞬間、突然親を見せ始めた父。
そんな親を恋しがる理由は、無意識にも存在しなかった。
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