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「でっけぇ……」
目の前にそびえ立つ建物を見てまず思ったことはそれだった。
丈夫そうな石垣に囲まれているようだが、左右を見ても曲がり角が見えない程真っ直ぐ続いている。
塀には結界でも張っているのか、微量の魔力を感じる。
前に感じたことのある魔力だが、誰の魔力かは思い出せない。
ふと周りを見渡すと、ほとんどの人が俺と同じ反応をしていた。
それも当然だろう。
王都の中でも1、2の大きさを誇るのがここ、セントレス学園だからだ。
「ついに来たんだな……」
俺は誰にも聞こえない程の声量で呟いた。
それと同時に、数日前のことが頭に浮かぶ。
*
「お前に頼まれたことも、なんだかんだで最後はちゃんとやっただろ。
少しは俺のわがままも聞いてくれ!」
叫ぶように言い放った俺の言葉に、フィアは腕を組ながら宙を眺めはじめた。
お互い黙り込み、静寂が部屋を支配する。
「はぁ……わかったわ……」
やがてこちらに向き直ったフィアは、諦めたような声を出した。
それを聞いた俺は飛び跳ねるような勢いで喜ぼうとしたが、
「ただし!」
この声に遮られてしまった。
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