それぞれの出発

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「シン!そろそろ行く時間じゃないのかい?」 「わぁってるよ!」 下の階から聞こえてきた母の声にそう返事をする。 まったく……今準備してるとこなんだから黙っててほしいよ。 愚痴りながらも着替える手は止めない。 ものの数秒で着替え終わると、母のいる下の階へと降りる。 「んじゃ、おふくろ。行ってくる」 「はいよ。仕事で見送れない父さんに代わって言うけど、問題なんか起こすんじゃないよ?」 ホント信用ないんだな……俺。 「そんなことしたら親父に殺されるって」 これは冗談じゃない。 昔、近所のおばちゃんにイタズラした時なんか……思い出しただけで寒気がする。 そんな嫌な思い出を頭から振り払い、俺はゆっくりと家の扉を開けた。 それと同時に、日差しが俺を祝福するかのように照らす。 ありがとう太陽。 今日から俺の伝説が始ま―― 「アンタ何やってんだい。急がないと遅刻するよ?」 フフッ……どうやら最初の伝説は長距離走らしい……。 「……遅れるぅぅ!」  
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