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「それじゃあ母さん、行ってくるよ」
「気を付けてね。それにしても、息子の出発だっていうのにあの人ったら」
母さんはこれでもかというほど家の中を睨み付ける。
その視線……いや、死線は壁をすり抜けて父さんに向いているだろう。
「気にしないで。昨日も仕事で帰ってくるのが遅かっただろ?たまにはゆっくり寝かせてあげなよ」
「しょうがないわね……」
母さんはそう言って睨むのをやめた。
まったく……俺がいなくて大丈夫なんだろうか……。
「それじゃ」
「行ってらっしゃい、ジーク」
俺は片手を挙げながら振り返らずに歩き出した。
学園か……なんだか緊張するな。
学園が近くなるにつれて、いろんな考えが頭に浮かぶ。
どんなやつらがいるんだろう。
とか、
ちゃんと友達できるか。
などなど。
そして何より、自分の力がどこまで通用するか。
「まっ、考えても仕方ないよな」
そう気持ちに区切りをつけて天を仰ぐ。
この青空みたいにのんびりいくさ。
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