これから

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 僕は酒が入ると、つい愚痴を口にしてしまう性質で、それをもろに受け止めてくれるのが、繭君だ。本当に、君には感謝しても感謝しても、し足りない。  「僕は彼女に、仁としてさ、安全に何不自由無く暮らして、ほしかったから、頑張って働いた、つもり、だったんだけどな。でも、義が、なって、なかったのかも、しれない。いや、なってなかったんだよ。だから、彼女は出て行った。僕は、正しくなかった。僕は、今迄生きてきて、こんなにも失った事なんて、なかったんだ。なのに、人生の終盤なのに、なのに、なのになのに、殆ど、失ってしまった。子供だって作ったけど、カメラマンなんかになって、今どうしてるんだか分からない。僕も、どうしてるんだか、どうしたら良いんだか、分からないよ……」  僕がいつもの様に、そう愚痴ると繭君はいつもの様に、こう答えてくれるんだ。 「何言ってるんですか。私が居るじゃないですか。私がおじさんをどうかしてあげます!」  繭君はいつもいつも、僕の嬉しい事を言ってくれるんだ。だから、君には、幸せになって欲しいって、心から、思う、想うよ。
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