viavo

2/5
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
大量の書類へのサインを終え、使い古した万年筆をペン立てに戻そうとして、その傍らにある薄い箱に気づいた。 箱のあちこちが破れかけたそれは、安っぽい色鉛筆だった。どことない懐かしさに思わず手に取る。 ―赤、青、水色、黄色、オレンジ、ピンク、紫、黄緑、緑、金、銀、黒。たった12色しか入っていないが、オレンジだけが異様に使い込まれ、短く減っている。 「…ナランチャか」 思わず柄にもなく微笑ましい気持ちになって、窓の外を仰いだ。街を見下ろした遠くに、微かに海が見える。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!