9人が本棚に入れています
本棚に追加
コップに水を注いで、スプーンを並べて。
ちょっと見てくれの悪いオムライスを電子レンジでチンして。
いつも向かい合って座るテーブルに、
並んで座る。
僕は右。初流乃は左。
「イタダキマス」
「…いただきます、」
温かな料理(…主にケチャップ)の匂い。
時計の音。
ふたりでつつく皿。
…初流乃、これ真ん中の方ケチャップライスじゃないよ、白米だよ
…じゃあケチャップかけなよ
そういう問題じゃ…ああ、ほら!!いつつけたんだよ、ケチャップの染みはついたら落ちにくいんだから…さっさと脱いで
やだよ寒いから
ダメ、今つけとかないと落ちなくなるから
……(めんどくさい…)
ほら、初流乃!!
……姑(ボソ
…聞こえてるよ?いいから早…むぐっ
あー…はいはい、後でね
無理やり人の口にオムライス(というよりほとんどケチャップ)を詰め込んで、初流乃は笑った。
時計の音。
犬の遠吠え。
隣。
皿を洗う音、
「いつも、」
ふいに背中にかけられた、お疲れさま、という言葉は聞き間違いなんかじゃなかったと思う。
膝をたたんでお決まりのポーズで目を閉じた初流乃の肩が、くつくつと笑いをこらえているのが見えたから。
僕はそれに気づかない振りをして、やっぱりくつくつと笑いをこらえていた。
-fin
最初のコメントを投稿しよう!