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「落っこちてきたのはこれみたいだね。どうする?壊しとく?」
「だめですって。荒っぽいのは散葉さんの悪いところです」
散葉をたしなめてから零也は球体を見つめた。完全な球体ではなく、上が細く下が大きい歪な楕円形だ。
そんな形に零也は覚えがあった。
「散葉さん、これって卵じゃないですか?」
「ふえ?」
「だから卵です。形が似てません?」
「言われてみれば…でも、なんの?恐怖の大魔王にしちゃ時代遅れだし、天使ならこんな被害をださないでしょ」
零也もそう思う。だからこそ散葉に意見を求めたのだ。
「…おばあちゃんに聞いてみましょう。きっと知ってますよ」
「むぅ…おばあちゃんとはいえ私以外の女に頼るのは気が向かないけど…しょうがないか」
「じゃあとりあえず持ってみますね?」
「あ、だめだよっ!危ないってば!」
散葉の制止がかかるまえに零也は卵に触れた。
ふっと、光が消えて卵は零也の腕に身を任せるように抱かれた。
「大丈夫みたいですよ。ちょっぴり温かいです」
「もう、ダメだって言ったのに。零也くん今は普通の人なんだから…罰として今日は厚着して寝ちゃうから」
「ええっ!?ご、ごめんなさい散葉さん!謝ります、謝りますからぁ!それだけは勘弁してください!」
散葉枕の温もりが、厚着されることによって約二割まで軽減されるのが零也調べでわかっている。そんなのは御免だ。
「えへへ、零也くん必死になっちゃって…可愛いっ!嘘だよ?今日は下着がいい?裸がいい?」
「や、あ、あの…下着の方向で…」
服を着てくださいとは言わなくなったあたり、零也も毒されているのかもしれない。
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