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大変なこと。
そう言われても零也はあまりピンとこなかった。
もちろんどんなことがあるかわからないからと言うのもあるけれど、ここ数ヶ月は大変でない日の方が少なかったからの方が大きい。
「で、結局なんなのよ?だいぶ強い霊力よね」
「まだ断定は出来ん。一応命ちゃんに聞いてみるまでは待たんと」
薬婆の言葉にはほんの少しの焦りが混じっていた。
零也は思った。
おばあちゃんらしくない。
そりゃあ薬婆だって焦ったりはするだろう。けれど、今まで薬婆は雪鬼の時でさえしっかり零也を後押ししてくれた。その薬婆が表面に感情をだしている。
それだけで不安要素としては申し分なかった。
「薬師婆様、命です。入りますよ」
ガラリとドアが開いて命が姿を現した。
「これが件の卵ですか」
命は卵に目を向けると目を見開いた。
「薬師婆様のご意見は正しかったようです。これは紛れもなく龍族の秘宝、素龍の卵です」
重々しく告げられた事実はゆるゆると動き始めていた歯車を加速させる起爆剤だったことを、零也達はまだ知らなかった。
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