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学園の屋上。
普段はあまり人が踏み入れることのないその場所に、たくさんの妖怪がひしめいていた。
百鬼夜行とはよく言ったもので、月明かりすらない今日はその異様さも普段の比ではなかった。
「始めるぞ、準備はいいか」
ざわめきが止まった。
声を発した妖怪がにやりと笑う。
それと同時に彼は自分の手のひらに火を灯し、最終確認をした。
「本当にいいんだな?…政基」
「…あぁ、やってくれ。なるべく早い方がみんなも楽になる」
重々しい言葉を聞いて、彼は火を落とした。
途端に火はなにかに導かれるように広がり、燃え盛った。
しばらく経つと肉が焼ける匂いがあたりを包んだ。
待ちきれないように妖怪の一人が口を開いた。
「も…もう我慢できねぇ!まだかよ政基!」
「ちっ、少しくらい我慢出来ねぇのかよ」
嫌そうに呟きながら政基は火に目をやった。
その瞳は鬼特有の仄白さが残っている。
「お前たち、よく今日まで我慢した。これは俺からの褒美だ」
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