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うわ、何でもないところでいきなりの難題だ。
散葉の得意料理は極限まで味を追求した素うどんだ。それはいつでも食べられるように常にコンロに大鍋いっぱいの出汁を蓄えている。
しかし、最近の散葉はあらゆる料理を作ってくれる。
その一つ一つはもう政基に並ぶ領域だ。
捨てがたい…!
零也は悩み、悩み抜いた末に結論を出した。
「今日は散葉さんといっぱいいろいろしたいから…素うどんでもいいですか?」
「うふふっ。ダメって言うと思う?いいに決まってるよ」
言いながら散葉は笑った。
零也は髪を結っていた手を止めて散葉の背中に頭を乗せた。
ピク、と散葉が反応する。
「どうしたのかな?眠くなっちゃった?」
「そうじゃないんです…。いい匂いだなぁって」
「へ?いつもと同じなんだけどなぁ」
「だから、いつもいい匂いなんです。ふふふっ…」
すりすりと顔をすり付けると散葉は擽ったそうに体を揺すった。
「もう、どうしたのいきなり。あ、わかったぁ!私が両手を使えないからだねっ!?」
「あれ?バレちゃいましたか」
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