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「それは?」
駄目だ。逃げられない。
散葉は多分、強制して聞いたりはしてこないだろう。けれどなんの策略もなくただ疑問だけを浮かべた瞳が見つめているのを無視出来るほど零也は冷酷じゃなかった。
「多分、いつかはその子をもとの両親のもとに返すと思います」
「うん…まぁ、自然発生した卵じゃなければだけどね」
「でも、少なくとも僕はそれまでは自分達の子として育てたいんです。初めから他人の子として育てられるのはきっと…悲しいことですから」
幼い子供にとって、親はとても重要な存在だ。現に零也は今でも母親を探している。
「で、ですから…散葉さんだけが霊力を込めたらそれは散葉さんの子…みたいで…。どうせなら一緒にって…」
最後は消え入るようなか細い声だった。
けれど、神である散葉には十分だった。
「もうっ、かわいいっ!」
散葉は一瞬で背後に回り込んだ。大きすぎる脂肪球に零也の後頭部を押し当てながら散葉は熱に浮かされたように言葉を並べる。
「そうだよね!私だけでやったら意味がないよねっ!あ~…もうっ!なんでこんな簡単なことに気付かなかったんだろ」
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