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☆
日も暮れ、寒さがピークを過ぎた夜更けだった。部屋でノートを見つめていた咲夜のもとに奏が現れたのは。
「鬼太郎さんがやられました」
奏からの知らせを聞いた咲夜はすぐに立ち上がった。
死霊使いの事件は無差別ではない。だから、身内のいない人が集まっている場所を巡回することで次の被害を避けるはずだった。
だというのに───。
「容態は?」
「それが…刀傷だったんです。肩口から腰にかけて一太刀で…。今、薬婆様が治療しています」
「刀傷?そんなはずはありません!だって敵は死霊使…」
「認識が甘かったんです!敵は一人じゃなかったんです!」
しまった。
咲夜は一瞬、茫然とした。
そうだ、何故私は敵が一人と判断したんだろう。
ぎりっと歯噛みしてすぐに頭を切り替える。
「被害にあった場所は?」
「秋街の朱染神社前の空き地です」
「………は?」
街の地図は頭の中にある。
神社前の空き地だってわかる。
でも、おかしいじゃないか。
だってあそこには─────。
「あ、あそこには浮浪者も何もいないはずです!」
「そう、いなかったんです。鬼太郎先輩も、巡回を終えた帰り道だったみたいです」
「意味が分かりません!さっさとなにがあったのか言いなさい!」
「去年の暮れ、花見に行く前に、四季織町にいた謎の人達を地下室に捕まえましたね」
「共食いを始めて妖怪化した連中ですか?あれが関係してるんですか?」
「奴らを、死霊に喰わせてたんです」
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