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無理矢理に零也を屋上の端に連れて散葉は歩く。
七海もそれについていって三人とも端についた。
「この技はきちんと目標を定めるのが大切なの。とりあえずあの小石をターゲットにしようか」
散葉が指さしたのは本当に小さな小石だ。なんだったら空間転移で岩を取り寄せればいいのに。
「それで…いったいどんな技なんです?」
「うんとね~…焼くんじゃなくて、消滅させるのを目的とした技かな。名を、鳳凰千破」
「鳳凰…千破?」
なんか凄そうな名前だ。
少なくとも火焔柱とは比べ物にならなそうな感じ。
「うふ?ま、やってみるのが早いかな。まだ神降ろしは出来ないから私がやるね?」
「お願いします!…あ、でも無理はしちゃいやですよ?」
わかってるってと前置きして散葉は深呼吸した。髪を紅く染め上げて、呟いた。
「──鳳凰千破──」
一瞬の間を置いて技が発動した。石の周りに八つの火球が現れ、地面には七重の円。
火球が石の周りを旋回し始めるに従って円も回転を始める。熱源が回転することによって生まれた上昇気流は石を宙に浮かせた。
そしてとうとう炎は牙を向いた。
円は中心から段々に火柱に変わり、周囲を旋回していた火球は火柱の中に飛び込んでゆく。
火柱は激しさを増し、やがて一つの形を成す。
名が示す通り、炎の不死鳥───鳳凰。
閉じていた羽を広げ辺りをつんざくような声で鳴くと不死鳥は爆散した。
あとには灰どころか塵一つ残っていない。
「ぅ…ぁ…」
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