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雪が舞い落ちる
ゆっくりゆっくり積もっていく。それがなにかと言われても困るのだが、光に当たり輝きながらおちていくそれは死を連想させる。
溶けることそれこそ無になる事に直行する。まぁそれもなにかと言われてら、これまた別にどうと言うわけでもないのだから困ったものだ。
感傷的になっている自分が痛すぎて笑える。
庭は真っ白。何にも染まってはいない無垢な白。思わず汚したくなるのは色々曲がっているからだと思いながら庭に出る。
ギシ、ギュッ、と雪特有の音がする。
草履だから雪が足に着いて当然で冷たいのだが、それが何故か嬉しくてもう一度雪を踏んで音に耳を傾ける。
端から見たらただの変な人だろうが今は早朝。まだ城内は静かだ。見られるといっても限られている。それに自分の部屋には一人しかいない。
襖を見ていたら今度は急に暖を取りたくなった。
草履を庭に脱ぎ捨てて、起こさないように襖を開けるとやはりまだ寝ている彼が占領している布団に入った。
するとひんやりとしたのがわかったのか少しうずくまった。それがまた面白くて、可愛くて、思わず後ろから抱きしめた。すると寝返りを打ち、こっちを向いたかと思うと
「……小十郎……何でそんなに冷てぇんだよ…」
うっすらと目を開け、掠れた声で擦り寄ってきた。
さながら猫のようで可愛かったがそれ以上に可愛いから今の例えは無かったことにする。
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