プロローグ

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あの事件から数日後 東京にてー 「藤田先生、そんなわけで彼らまで喧嘩を始めてしまって、この喧嘩を止めるのが本当に大変だったんですよ。」 「お前は北海道に行ってまでも治安を守っていたわけか。警視官(現在の警察官)の鏡だな。」 「もう藤田先生、他人事だと思ってー。」 藤田五郎が警視官であった頃に部下であったこの男は、北海道小樽に旅行した際にこの騒ぎに出くわしたのであった。 「ああ悪かった。ところで、その爺さんの顔は見なかったのか。」 「その爺さんは、私が来たときにはもう既にこの場を離れたようですね。」 「そうか。その爺さんがどんな奴か一度見てみたかったな。」 「そうですね。意外に藤田先生と気が合うかもしれませんね。」 「それはどうかな…。」 藤田は、かつての部下の言葉に自嘲的な笑みを浮かべた。 「あっ、そういえば、藤田先生は西南戦争で活躍されたそうですね。」 「活躍したかどうかは知らんが、戦争には警視庁から抜刀隊で参加したことがあったな。」 「藤田先生が自分の剣で大砲を二つも壊したことは、今でも警視庁の語り草です。私も新聞の記事を見てから、藤田先生の下で働きたいと思い、警視官の試験を受けたわけですから。」 「…嗚呼、そんなこともあったな。」
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