プロローグ

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所は変わって北海道大学― 「さあ先生、部員がお待ちかねです。」 「そうか…急いで行かねば。」 翁たちは、道場に行く足を速めた。 道場には、部員がズラリと行儀良く正座をして杉村先生が来るのを今か今かと待ちかまえていた。 「遅くなってすまない。」 「部長、遅いですよ。ずっと正座だったから足が痺れてしまって…いたたっ」 「そうか、長時間待たせてすまなかったな。」 「それにしても、若いもんがこれしきのことでだらしないぞ。我慢することも剣術の修行のうちだ。」 「…はい」 「まあまあ、その代わりといってはなんだが、今日は杉村先生に剣の指導をしてもらえる滅多とない機会だから真剣に学ぶように。」 『はいっ』 「わしに質問したいことがあればいくらでも答えてやるからどんどん聞いてくれ」 「はい、杉村先生は神道無念流を免許皆伝されたということを聞いたのですが、免許皆伝は稽古を沢山すれば、師匠から与えられるものなのでしょうか?」 「確かに稽古を沢山して師匠に認めてもらえれば免許皆伝になるが、ある程度は剣術の才能が必要じゃな。」 「あと、もう一つ質問いいですか?」 「ああいいぞ。」 「木戸孝允さんも神道無念流で免許皆伝されたようですが、杉村先生は木戸さんとの交流はあったのでしょうか?」 (木戸孝允って確か桂小五郎と名乗っていたときもあったな。一度も合間見えたことはなかったが…) 「木戸とは通った道場が違うから直接会う機会がなかったがな。それでも、一時期は道場を守っていたくらいだからなかなかの腕前だと聞く。木戸はもう死んでしまったから対戦はできないがな…。しかし実際に剣術で木戸とわしのどっちが強いかというとわしのほうが強いがな。」 「有難うございました。」 「…それにしても、じっとしてるのはわしの性分に合わん。今からこのわしが直々に稽古をつけてやるから竹刀と防具を寄越せ。」 「はい、只今。」
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