一ふり

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  「あいつは元気がありすぎるんだ」 少年がキッと睨むため、男は まあまあ と少年をなだめた。 「俺に言わせりゃお前が落ち着きすぎだ。 年も近いんだ。少しあいつを見習ってみたらどうだ?」 そう男が言った時に部屋の外からバタバタと例の足音が聞こえた。 少年はチラリと部屋と廊下を繋ぐ扉を見て一つ溜め息を吐いた。 その顔には呆れがありありと読み取れる。 足音が部屋の前で止まり、コンコンと扉が叩かれた。 「藤堂です」 「おう、入れ」 男がそう答えると、外にいた人物が入ってきた。 小柄ですこし華奢な体、大きな二重の瞼、白い肌、紅くふっくらとした唇、走っていたからか少し赤く色付いた頬。 この点だけを取ると可愛らしい少女にしか見えないが、栗色の短髪とその服装、変声のせいでややかすれた声で男であることがわかる。 「斗鬼! 探したんだぞ!」 少年はそい言ってパタパタと黒髪の少年に駆け寄った。 「剣輔、暹への挨拶が先だろ」 「あ! 暹さん、こんにちは。おじゃまします」 黒髪の少年が軽く頭をこずくと短髪の少年は慌てたように男向かってお辞儀をした。 その様子を男は微笑を浮かべながら見ている。
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