一ふり

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  朝から大声で呼ばれていた「とき」という人物、これはこの黒髪の少年である。名を 緋之 斗鬼(ひの とき)という。 そして椅子に座り二人の少年を見守るこの男は 佐方 暹(さかた のぼる)、 栗色短髪で元気があり余っている様子の少年は 藤堂 剣輔(とうどう けんすけ)である。 斗鬼はつ、と剣輔を指差し、 「俺がこいつのようになってる姿、想像できるか?」 と言った。 先程の呆れと共に、どこか皮肉めいた笑みを浮かべている。 当の剣輔は、こてんと首を傾げ、何のこと? と斗鬼と暹を交互に見ている。 先の行動と合わせて、無邪気さ100%でできているようだ。 「………………」 「…おれ? 斗鬼がおれのように……? 斗鬼は髪が短くなっても美人だと思う!」 暹が斗鬼の言葉につい黙り込んでしまうと、剣輔は何を勘違いしたのか、はいっと片手を挙げ言った。 「………………」 「いやぁ、剣輔はカワイイなぁ。 やっぱ斗鬼にはムリだな。 剣輔、お前はいつまでもそのままでいてくれ」 今度は斗鬼が黙ってしまい、暹はガッハッハと笑いながら剣輔に歩み寄り、わしゃわしゃと彼の頭を掻き撫でた。
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