零ふり

2/6
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
   ザリ、ザリ、ザリ ある春の夜道を十数人の男達が歩いていた。 「最近、辻斬り多いよな」 「ああ……おちおち一人で歩いてらんねぇよ」 「早く家につかねぇかな……」 皆一様に不安気な言葉を吐いているが、顔はその言葉を裏切り、自信に溢れた表情をしていた。 中には何かを期待するような目をしている者もいる。 『────────』 「え?」 男の一人が立ち止まり、辺りを見渡した。 それに気付いた他の男達はその不可解な行動に眉をひそめ、口々にどうしたと尋ねる。 「いや、何か聞こえたんだけど……」 男は少し困ったようにそう訴えるが、周りはそれを笑って否定した。 どうやら何か聞こえたのはその男だけだったらしい。 「気のせい、気のせい。ほら、置いてくぞ?」 でも、と食い下がる男に手をひらひらと振って、一番前を進んでいた男は再度歩きだした。 それを機に他の男達も歩きだす。 流石に置いていかれたくはないと思い、男も慌てて追いかけた。 .
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!