零ふり

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  しかしその足は一歩前に出ただけで再び止まってしまうことになる。 一番前を歩いていた男が急に倒れたのだ。 それだけではない。 次々と前の方から倒れていく。そう、まるでドミノのように。 半数程が倒れた時、倒れた男の陰から一人の少年が現れた。 歳の頃は十代中盤といったところだろうか。 今の時代に珍しく墨染の着物を纏っており、闇に溶けつしまいそうな漆黒の髪は頭の上の方で一つに結われているのが闇夜にかろうじてわかる。 顔は右目に黒い眼帯を、口元には黒い布を巻いているため左目しか出ておらず、その表情は分からない。 そして、彼の手には一本の片刃の剣が握られていた。 いわゆる日本刀だ。 これも今の時代に見ることはほとんどない。 その刀からは暗い液体が滴り落ちており、男達が倒れたのはこの少年の仕業なのだろうと予測ができた。 「貴様、何者だ!」 突然仲間が倒れ、子供が現れたことに呆然としていた男達だったが、剣から滴り落ちる血を見て仲間がこの少年に斬られたのに気付くと、我に帰り騒ぎだした。 .
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