バアちゃんのなる木

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  扉が開く。静まり返ったその部屋にバアちゃんはいた。 いっそ逃げ出したかったがお母さんに肩を押され中へと進む。 「……お母さん………」 白い布を取ると同時にお母さんは言葉を詰まらせ、口を押さえた。 「…バアちゃん」 私は涙は出なかった。さっきまでの号泣が嘘のように、悲しくない訳ではなく、何というか涙は出なかった。 「ごめんね。…バアちゃん」 そう言うとお父さんは私を優しく抱きしめ『明日香のせいじゃない』と力強く言ってくれた。 ……いっそのこと責めてくれたら泣くこともできたのに。 その後、私は親戚のおばちゃんに連れられて一泊することになったが、昼間の疲れかそのまま車内で眠ってしまったらしい。  
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