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葬儀やら何やらその後はよく覚えていない。
死因は頭部強打による脳内出血で、言葉通り打ち所が悪かったということだった。
祖母が居なくなって最初の春を迎える頃に、母親に聞かされた話がある。
嫁いで間もない頃に聞いたのだという。
それは近所の高台に一本だけ大きな木があった。
そこが二人のデートスポットだったらしい。
確か梅の木だったと思う。
結婚して祖父が出征の日も二人は木の前で約束したらしい。
『俺は必ず戻ってくる。
しかし保障はなか。
もしもそん時は子供たちを頼む。
体十分で帰ることができんようなら、俺はこの梅の木の花となって帰ってくるけん。
それまで待っててくれ』
と祖父はその言葉を残して戦地へ向かい、戻ることはなかった。
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