バアちゃんのなる木

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  そして丁度、今ぐらいの季節に戦死の知らせを受けた祖母は、ふらつく足取りで高台へと向かった。 気丈に振る舞っていた祖母もその梅の蕾を見つけた時は、『約束を守ってくれた…私がしっかりしなくては…』とその場に泣きくずれたという。 それから泣いたことは一度もなかったらしい。 それから毎年、欠かすことなく祖母は梅を見に出掛けた。 私も何回か付いて行ったことはあったが、ただの散歩とばかり思っていた。 今では祖父と二人でゆっくりと暮らしているのだろうか。  
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