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「おーす!」
場違いに陽気な声が、教室に響きわたる。
「ん?どしたんだ?」
教室の視線が、奈都から声の主に向かう。
入口には、茶髪、赤いピアスをした小柄な少年が立っていた。
「おーす、弥矢。何?この空気。重くね?」
「あー、うん…」
弥矢はチラと奈都を見る。
奈都は立ち上がったまま、止まっていた。
「ん?奈都?」
もう一人の親友、太一郎が奈都の顔をのぞきこむ。
「お、おい、あぶないぞ?」
危険を教えてやろうと、クラスの者達が太一郎に声をかける。
バッ
奈都が顔を上げた。
蒼白な顔で教室を駆け出す。
「あ?奈都?」
「なっちゃん?まだ授業あるよ~?」
駆け出した奈都には、2人の声は聞こえない。
全速力で走る。
事実を確かめに。
そうだ、まだはっきりとあいつの口から聞いたわけじゃない!
もしかしたら、もしかしたら、未遂…かもしれない!
まだ、信じたくない!!
私が、私が、あの男と……
嫌だっ!!!
向かう先は……
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