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「どうかしましたか?」
後ろから優しげな男の人の声が聞こえた。
「いや・・・。何でもないんです―――」
声のトーンが下がったのは自分でもわかる具合だった。
人にかまっている暇はなかった。
「何か落し物ですか?」
諦めずに聞いて来る男。
呆れてあたしはその人に軽蔑の眼を向けた。
だが、その男は笑って、差していた傘を向ける。
その笑顔にあたしは心を打たれた。
あたしよりも年上そうで、でも三十路は過ぎてなさそうで・・・。
綺麗な人だと思えた。
それはどうでもいい。今は指輪が大事だった。
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