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「見ぃつけた。」
後ろから声が聞こえた。もう聞きあきた言葉は何度聞いたのだろう。
相手がどこにいるのか確認もせず、転がるように横へ跳んだ。
しかし、ふくらはぎに何かがかすめ、ろくに受身も取れず地面に転がった。
「足を負傷か。さすがに限界かな?」
幼い声の言う通り、痛みで立つことはできない。
それでも、それから逃げるように地面を這った。
「まだ逃げるの? なんかしぶとい通りすぎて無様だよ?」
だからどうした。と嬢坂は心底思う。
かっこよく死ぬことに意味などない。たとえ無様だろうが醜かろうが、死ぬことは嫌だ。
そして今はすがるべく希望がある。
あの馬鹿が、私を助けてくれると信じている。
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