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『…なんか、すごい驚いているわね。』
女性は音もなく立つと、スーっと俺の前まで移動してきた。逃げようにも、すくんだ俺の足は動かなかった。
『命の恩人にその態度はだめよ。あの時、私のアドバイスがなかったら、みんな死んでたわよ?』
少し冷静になった脳は、その言葉をゆっくり理解した。
「アドバイス? 何かしたのか?」
俺の問いに、大げさにため息をついてから、
『助かりたいなら聞きなさい!』
近くで大声を出されて鼓膜がビリビリと音をたてた気がした。
『わかった?』
ふん。と腰に手を当てた幽霊さんを指差して、もはや幽霊への怖さは消えていた。
「嬢坂と静寂を助けてくれた…」
そう。とうなずいた幽霊さんは、ふわりと浮き上がって空中に寝転がった。
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