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「いやあの…それはありがとうございました。」
戸惑いがちに頭を下げると、幽霊さんのクスクス笑う声が聞こえた。
『怖がったりお礼言ったり、忙しい子ね。』
顔を上げると、幽霊さんは空中で綺麗に笑っていた。
『君、名前は?』
「深夜…織地深夜。」
『深夜…良い名ね。真夜中なんて、かっこいいじゃない。』
その言葉に、少しだけ痒くなった。名前を誉められたのは初めてだと思う。
『深夜くんは、魔法を知って日が浅いみたいね。私程度で驚くなんて。』
言葉の意味を理解しようと頭の中で必死に考えていると、幽霊さんがクスクス笑う声がまた聞こえた。
『私は、正しく言うと、幽霊じゃない……思念体、と呼ばれるものね。』
まるで年下に言い聞かせるように、幽霊さんは話し出した。
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