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軽くパニック状態の美紀を覗き込む。美紀は一五三しかない小柄人間で、喜一は一八○もある大型人間だ。覗き込むというより見下ろしたというのが近いと思う。
「十三日の金曜だし、お持ち帰りされても文句いえないな」
ジェイソン?
「それはつまり……」
「所謂送り狼?」
音で表現できるならポンとかボンとかだと思うけどそれぐらいすぐに真っ赤になっていた。
「うぁああ、だ、ダメです」
酔ってるせいを入れても、流されるのは嫌だ。やれるだけの女だって思われたくないから。
「だって仕方ないだろう?お前、既成事実でも作らなきゃ、いつまで経っても後輩だ。これでも俺、結構誘ってたんだけど」
なっと、近くの壁に押し付けられる。
「う、嘘だ……」
「嘘でこんなことするかよ。今、巷で流行ってるんだろ?逆チョコってやつ。恥ずかしながら用意しました。さぁ、御手をどうぞお嬢さん」
渡されたのは小さい包み。チョコと言うよりは……。
「……アクセ?」
「俺はやっぱりもらう方が好きだから。明日はくれるんだろう?」
甘いマスクをつけた喜一は美紀の答えを聞く前に、口づけを落とした。
二月十三日。今年は不吉な金曜日。
でもありかなぁて思うのは気のせいじゃないわよね。
完
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