プロローグ:朝の甲板の上

2/2
前へ
/61ページ
次へ
 凛とした風が吹いた。強い風だった。目の前の彼女の髪は風にゆられて左に目一杯広がる。髪と髪の隙間から太陽が差し込み、光輝いていた。甲板の先の方に立っている彼女は、ずっと船の進む方向を見据えている。  僕は一瞬でその光景に見とれてしまった。 「久しぶり」  僕を見ると彼女は嬉しそうな、  でも、なにかを覚悟したような顔でそう言った。  僕と舞はそうやって再会した。  その再会は、遠い昔に交わした『約束』を守るときが来た瞬間でもあった。      
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加