第2話:文庫コーナー

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――本当に?  また聞こえる。さっきまでの僕の中にいる何かとは少し違う。まるで外から聞こえるような、そんな感覚の声だ。 ――本当に?  ただただ同じ言葉が繰り返される。その声を聞く度に、僕の鼓動が大きくなる。  僕はその声に一瞬恐怖し、そしてそれはすぐ怒りに近いものとなった。 ――本当に?  当たり前じゃないか。僕に何ができるってんだ。本当にだって?だったら教えてくれよ。どうしたらこの黒いもやから逃げられるんだ?どうやったら坂村さんを助けられるんだよ?  声は答えない。ひたすらに、質問を投げかけてくる。 ――本当に?  そうとも、本当さ。 ――本当に?  しつこいぞ。 ――本当に?  うるさいな。何も教えてくれないんだったら消えてくれ。 ――本当に?  いい加減にしろ!僕に何ができるんだよ!僕なんかに何をさせるつもりなんだ!僕なんかに、僕なんかにどうにかできるものなんて……      あった。  たった1つだけ、あった。  僕が久しぶりに親父に感謝して受け取った物。  僕が乗り気じゃない健に差し出した物。  僕が加奈崎さんに渡そうとして、見事に失敗に終わった物。  今、僕のポケットに入ってる物。 いつの間にか、うるさい声は聞こえなくなっていた。
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