第2話:文庫コーナー

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「坂村さん!」  僕は走り出した。無意識のうちに走り出していた。  坂村さんとの距離はたったの数十メートル。走るような距離じゃない。それでも、全速力で走った。 「坂村さん!」  名前を叫ぶ。向こうも僕に気づいたようだ。驚いた表情で僕を見ていた。 「坂村さん!」 「え、何?」  目の前まで来た。たった数十メートルの距離で、僕は息を切らしていた。 「あの……」  ポケットに手を突っ込む。そして紙2枚の紙に触れる。  親父から貰った3枚の紙。  そのうち2枚は僕が持っている。 そして残りの1枚は……  恥とか、ためらいとかは全然無かった。  黒いもやがそれらを隠していたから。それらを感じる事が出来なかったから。  無我夢中だったから。 「これ!」  僕は坂村さんに1枚の紙切れを差し出した。
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