第3話:重いドアの先

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「悠輔君、健君、早く早く!」 真っ先にバスから飛び出た坂村さんが、後続を催促する。が、僕は今、全くそれどころではなかった。 「元気だなぁ、真奈美ちゃん」 「おぇ……気持ち悪ぅ……」 「なんだ、バスくらいで酔ったのかよ。先が思いやられるな」 「うっさいな……うっ!」 できるかぎりの悪態を突く。 「こっちに吐くなよ。」 が、健はアッサリと言い捨てた。親友が苦しんでるんだから、もう少し心配してくれたっていいだろうに。 「2人とも~~、何やってんの~~!?」 「今行くよ~~!おら、悠輔。行くぞ」 「お、おい、揺らすんじゃ……おぅっぷ」 と、そんなくだらない言葉を互いに交わしながら、僕ら3人は船が停泊してある港までたどり着いた。 最寄りの駅に12時に集合して2時間半電車に揺られ、その後更にバスで30分。つまり3時間の間僕らは座りっぱなしだったわけだ。お陰で港に着いた頃には僕はとっくにグロッキー状態だった。 あんなに乗り物に揺られて気持ち悪くないなんて、健も坂村さんも大したもんだ。いや、ホントすげぇよ。 喉まで登りつめた胃液まみれの昼食をなんとか胃袋に追い返し、まだおぼつかないフラフラした足取りで立ち上がる。 心地良い潮風が、僕の頬を包み込むように撫でた。 気分も大分良くなってきたので、僕を差し置いてなにやら話している2人の方へ歩く。 1人は学校ベスト10に入る程のイケメン。 1人は肘までの長い髪を伸ばしたなかなかの美少女。 後ろから見てみると、本当にカップルにしか見えない。 坂村さんの今日の服装は、純白でノースリーブのワンピースに同色の鍔広帽子。 メチャクチャ似合ってはいるが、なんだか季節感がずれている。せめてもう一枚何か羽織れば良いのに。気になって電車に揺られていた間、僕がそれを尋ねると、 「何言ってるの悠輔君!京都とか大阪とかは大都会なんだよ!ヒートアイランドだよ!」 という天然回答が返ってきた。とても4月には本州へ引っ越してしまう人の発言とは思えない。 まぁ、こんな少しヌけている感じがまた、男子にはたまらないのだろうけど。 健の方は紺色のジーンズに白いシャツ。羽織ってある上着はグレー単色で薄手の物というラフな格好であるが、健持ち前のスタイルと顔でそんなラフな衣装でも、いや、そんな衣装だからこそ見栄えしている。ちょうど通りかかったOLらしい二人組の女性が健を見て嬉しそうに喋っている。さすがイケメン。
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