第3話:重いドアの先

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この二人を見た後、改めて自分の服装をチェックする。 ジーンズにシャツに上着。健と似たり寄ったりだが、僕の場合はなんだか頼りなく見えてくる。 さっき健を見ていたOL二人組が今度は僕と通りすぎる。 「あれは?」「64点くらい?」「妥当ね」 後ろからそんな話し声が聞こえた。 64………確かに妥当な数字だ。 苦笑いを浮かべつつ、僕は2人の話に加わる事にした。 「この船、でっけぇなぁ」 「そうかな?旅船って、大体このくらいだよ?」 数分後には僕らも乗るであろう船が、港にデカデカと止めてある。 純白にオレンジ・イエロー・グリーンの三本ラインが虹のように描かれたボディは、真っ青な海とは全く対照的で、見方によっては輝いても見える。どうやら2人は、この船について話を弾ませているようだ。僕もその会話に交わることにした。 「大きな船だなぁ、タダでこんなのに乗れるなんて、信じらんないよ」 「中で吐くなよ。立派な船が台無しだ」 「うるさいな。大丈夫だって」 「どうだか。中学の修学旅行の時だってお前……」 「ぅわー!!それ言うな!!」 「え?何々?健君教えて~?」 「真奈美ちゃん、こいつ実はさ……」 「うわぁ、だから止めろー!!」 「だっ、おまっ、痛い痛い!!離せ!こら、離れろ!!」 「あははは!」 坂村さんは笑っていた。純粋で無垢で、そんな屈託のない笑顔が、海面の反射でより一層美しく見えた。 1年生として迎える最後の学校、つまり学年度の終業式の日、坂村さんはクラスの前で自分が転校する事を明かした。
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