第1話:3枚のチケット

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「はぁ~~~っ。」  緊張を少しでもほぐそうと、僕はもう一度深呼吸を行った。  が、酸素が供給され変わりに二酸化炭素が排出されるだけで、緊張が緩んだかと言われると、全く変わらないどころか、更に高まっている気さえしてしまう。どこのどいつだ。深呼吸をすれば落ち着くなんて最初に言いだした奴は。 「落ち着け……落ち着け悠輔……何でもない……何でもないさ。ただ紙切れ1枚渡すだけだ」  次はブツブツと自分に言い聞かせてみた。端から見ればかなり怪しいが、これが結構落ち着いたりする。なんか、自分を応援してくれてる味方がいるような気がして、勇気づけられるんだ。  そう。なにも緊張する事はない。ただ渡すだけ、渡すだけなんだ……。  今、僕の制服のポケットの中にある紙っきれを。  でもそこらへんの紙とは違う。これは、「京都・大阪、2泊3日の旅」をタダでエンジョイできる、素晴らしい紙。いわば、旅行チケットなのだ。  なぜ僕みたいな一介の学生がこんなものを持っているかと言うと、これは僕の親父のおかげ(というよりかは所為)だったりする。  事が怒ったのは丁度3日前だ。
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