第3話:重いドアの先

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「なんだ、俺の部屋と変わんないな」 ドアを開け、僕の部屋をキョロキョロと見回して、健は言った。健の部屋は232号室。僕の部屋の左隣なんだから、変わらないのは当たり前だ。ちなみに健の部屋の左隣が231号の坂村さんの部屋だ。 2人の部屋を隣同士にしたのは、勿論僕の所為である。 「なんだよいきなり。部屋隣なんだから変わんないのは当たり前だろ?」 とりあえず聞いてみることにする。コイツがこんなこと言うんだ。それなりの訳があるんだろう。 しかし、次の瞬間健は、予想だにしないことを言った。 「いやな、こんだけ変わんないんなら、部屋変わっても不自由はなさそうだな、と思って」 「……は?」 思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。 健の言いたいことはつまり、「僕と部屋を変わりたい」ってことなんだろう。でも何故だ?まさか健の奴、坂村さんがあんまり好きじゃないのか?だから、隣になるのがイヤだから部屋を変わりたい? おいおい、そうだったら大変じゃないか。この旅行計画が全て無駄に終わってしまう。 困惑する僕をよそに健は更に言葉をつなげた。 「いやぁ、しっかし、悠輔のタイプが真奈美ちゃんだったとは。意外意外」 「……はぁ?」 またもや素っ頓狂な声、さっきからテンパってて声の調子もおかしい。 待て待て。今度は何を言い出したんだ? 真奈美ちゃんがタイプ?確かにあんな感じの子は嫌いじゃないけど……… そこで、健の言いたかったことを僕はようやく理解した。 健は勘違いしているんだ。 気を引きたくて、坂村さんを誘ったんだと。    
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