第3話:重いドアの先

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意地の悪い顔を僕に見せつけながら、健が続ける。 「俺はてっきり加奈崎さん狙いだと思ってたんだがな。まだまだ洞察眼は未熟かな?」 いや、当たってるよ。すげぇな、お前の洞察眼。 「まぁ、そういうことなら任せとけ。俺がバッチリサポートしてやる。そのために誘ったんだろ?」 あぁ、そうだよ。健に協力して貰いたかったさ。相手が加奈崎さんだったらな。 バンバンと背中を叩きながら笑う健。僕は、それを見て溜め息混じりのため息を吐いた。 まぁいいさ。勘違いしてるなら、それはまた面白い。都合も良いし、健にとってもサプライズだ。 そこまで考えた時だった。  ガクンっ! 突然部屋が、いや、船全体が下に下がったように感じた。 揺れる部屋。 衝撃で思わずよろけ後ろに倒れる僕。 支えもせずに僕をヒョイとかわす健。 くそぅ、薄情物め。 「あだっ」 「鈍いなぁ、さっきの放送ちゃんと聞いてたかぁ?」 からかうような声だった。悔しさがこみ上げてくる。 なんだかんだ言いながら、健は手を差し伸べてくれた。僕もそれを握り、引き上げて貰う。その時だった。 「ねぇねぇ2人共!船内見て回ろうよ!!」 勢い良くドアを開け、坂村さんが入ってきた。ノックをしようよ坂村さん。 僕がそう願ってるなどつゆ知らず、坂村さんは握りあった僕らの手をまじまじと見つめ、一言。 「……ボーイズラブ?」 坂村さんの天然もいい加減にしてほしい。    
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